この夏、鉄道会社の看板を掲げるためだけに存続し続けたわずか2.7kmのミニ路線にも近代化の波が押し寄せた。大分交通耶馬渓線から紀州鉄道へ流れてきた車齢49年の気動車キハ603がついに引退するという。しかも、あまりにボロいため、いつ壊れるかわからないサドンデス状態らしい。湘南顔に緑ツートンの金太郎塗装。この夏の課題として仕留めるに値する車輌である。これは行くしかない!しかし、1991年以来、18年ぶりとなる紀州鉄道への出撃を決意したものの夏休みは終始曇天。はたして間に合うのか?ジリジリと時間だけが無駄に過ぎていく中、やっとキハ603の運転日と好天がシンクロしたのがお盆休みから1週間後の週末だった。 今回も相棒は盟友・千ちゃん。彼もまたクソ天気にヤラレ続きで勝ち星をもぎ取れるチャンスをうかがっていたとのことである。それにしても関東から和歌山は遠い。東名→伊勢湾岸道→東名阪→阪和道とロクに休憩も取らずにひたすら激走すること7時間、御坊の街に着いたのは太陽もすっかり上がった午前8時のことだった。予報通り、日差しが痛いぐらいの激晴れの空の下、早速ロケハン開始である。 この紀州鉄道、まともなアングルがないことは18年前にもわかっていた。最近見た写真もビニールハウスや白いビルなどの見苦しい人工物がバックに写り込んだものばかり。しかし、いくら沿線の宅地化が進んでいるとはいえ、工夫すればバックに人工物ゼロの理想的アングルで仕留めることができるハズ。私も18年分成長しているに違いない。例えどんなロケーションでも、Vゴマを仕留めて帰ってくることが達人を目指す者として避けては通れない道なのである。しかし、呆気ないことに、ロケハン開始からわずか数分、御坊駅の目と鼻の先、緑の山をバックにしてアウトカーブのインカーブアングル(意味わかる?)で狙える場所を発見した。何ぁんだよ、ちょっと探しゃぁいい場所があるじゃねぇかよ。一般撮り鉄の目は節穴なのか?朝方は光線状態がよくないので沿線をしばらく探検。1時間ほど他のポイントを吟味してから、この場所に戻ってきた。意外と多い運転本数に慌ただしくあれこれレンズを取っ換えひっ換えして数カットを撮影。この夏の課題を駆け込み乗車で何とかクリアしたのだった。 *9/6追加*バックのビニールハウスがなければなぁ・・・ |