2010.9.4(土)更新
EF64あけぼの

2010.3.30(火) 東北本線赤羽
Canon EOS 40D EF500mmF4L IS ISO100
後悔する前に撮っておけ

 この話は実話である。北陸廃止の衝撃も覚めやらぬ3月某日、先手必勝をモットーとする私は早くも2010年シーズンの朝練を開始した。狙いはロクヨン1000番台のあけぼの。500mm×1.6デジでの超長玉縦顔面を狙うため、始発電車に乗って赤羽駅へ向かったのである。現場にはもちろん一番乗りで到着、ベストポジションをゲットした。とはいっても他にやってくるのは春休みのコンデジ少年か中途半端にカメラだけが立派なウザいS爺ばかり。キ○ガイレンズを構える私一人だけが妙に浮いているトホホな状況である。しかもターゲットのあけぼのは1時間半ほど遅れているらしい。仕方がない。我慢である。我慢するしかない。いつもと違ってかなりアウェイ感漂う現場でしばし待機する。
 やっと日の出を迎えた頃だろうか、ふと後ろを振り返ると怪しいニィチャンが立っている。うつむいて何かブツブツ言いながらヨダレを垂らして千鳥足でウロウロ歩いている。明らかに200%典型的な酔っ払いである。朝まで飲んで始発で帰るのだろう。我々の機材の方に近寄ってこないことを願うばかりである。5分ぐらい徘徊していたそのニィチャンは自分だけの世界に満足したのか、ホーム端から電車の乗車位置に戻っていくようなそぶりを見せた。ふぅ〜〜、一安心である。が!突如ニィチャンは急カーブ!ホーム際まで行くと、
「アッ!」
何と!そのまま線路に落っこちてしまったのである!近くにいた同業者数人と慌てて駆け寄り、線路に降りて呻いている酔っ払いのバカを2人がかりで引きずり上げる。電車が来るまでしばらく時間があったのが幸いだった。ただでさえあけぼのが遅延しているというのに、このクソバカが轢かれでもしてさらに遅れが拡大してはたまらない。我々も必死である。ニィチャンは脇腹を押さえてう〜う〜と唸ってはいるが、どこからも血は出ていないし頭も打っていないようである。駅員さんを呼んでクソ迷惑な酔っ払いのボケナスを引き渡す。駅員さんは2人がかりでニィチャンを抱えて連れていった。ホッと一安心である。
 しばらくすると駅員さんが戻ってきた。
「救助してくださってありがとうございます。感謝します」
酔っ払いは怪我もなく、酔いが覚めて正気に戻ったのちに無事帰宅したとのことであった。いえいえ、礼にはおよびません。実は我々はそれどころではなかったのである。酔っ払いの安否などどうでもええ。あけぼのの遅れ具合が気になって仕方がなかったのはもちろん言うまでもないだろう。列車を止めて新聞沙汰になったり、ダークなレッテルを貼られた撮り鉄ではあるが、たまには我々も人のためになるちょっといい話であった。
 写真は本文とは別の日に撮影したもの。クソ天気ばかりでやたらと寒かった今年の春先、上越国境で雪と闘ってきたあけぼのである。

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