この日、私は午後からセノハチで貨レを狙っていた。しかし、待てども待てどもやってくるのは普電ばかり。焼け死にそうなほどクソ暑い炎天下に線路際で4時間も待つものの結局貨レはやってこず・・・。お盆運休で見事に撃沈を喰らったのだった。もちろん天気はバリ晴れである。このままでは気が済むハズがない。どこかにこの鬱憤を晴らすところはないのだろうか?そういえば近くに呉線が走っている。呉線随一の名撮影地である忠海−安芸幸崎もそれほど遠いことはない。しかし、時間はすでに17時を過ぎ、日没まで残すところ1時間半ほどである。間に合うのか?今回もカツいことこの上ないが考えている余地などない。行かなければ写真は撮れないのである。毎回毎回撮影行は無計画の私である。これぐらいのカツさなど過去に幾度となく経験済。問題になどならないのである。 数十分後、私は忠海の街を見下ろす山中にいた。しかし、まだ角度が足らない。高圧電線やら何やら目障りなものがかわせないのである。ウロウロしているとさらに上に登る登山口にたどり着いた。ヌケるのか?日没前に撮影可能な列車はあと15分で忠海駅に到着するらしい。間に合うのか?悩んでいる暇はない。機材を背負って登山道を駆け上がる。5分後、まだ線路は見えない。さらに5分後、周りの林が開けた。オオォーー!なかなかの絶景である。東に尾道−今治を結ぶ本四連絡道路であるしまなみ海道が見える。しかし、景色に見とれている余裕はない。眼下の忠海駅を発車する電車がチラ見えするなか汗だくで機材をセットする。ジリジリと進む電車が海沿いで減速した。観光サービスで速度を落とすらしい。狙いの位置でシャッターを切る。いつもなら撮りたいとも思わない広島色の105系であるが、今日だけは眩いばかりに輝いて見えた。 |